icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学11巻7号

1969年07月発行

文献概要

研究と報告

書字の際に顕著な反復傾向を示した側頭葉腫瘍の1例

著者: 鳥居方策1 大岸敬明1

所属機関: 1金沢大学医学部神経精神医学教室

ページ範囲:P.537 - P.542

文献購入ページに移動
 書字における顕著な反復症状を示した脳腫瘍の1剖検例を報告した。
 患者は右利きの男の会社員で,44歳の時,てんかん発作(精神発作および自動発作)をもつて発病し,49歳になつて比較的急激に頭痛,嘔吐,左片麻痺,左側同名半盲,意識障害などの症状を呈して入院した。検査の結果,右の側頭葉に腫瘍のあることが判り手術を受けたが,剔出は不能で全経過約5年で死亡した。入院後,意識障害の軽度な時期に認められたおもな精神症状ないしは脳病理学的所見は,周囲に対する無関心,多幸的・楽天的気分,先見当,記銘および記憶の障害,高度の失算,健忘失語,仮性同時失認,保続および滞続症状,ならびに書字などにおける著明な反復傾向であつた。反復傾向は話し言葉や普通の動作にはほとんど認められず,書字などにさいしてのみ顕著に現われたことが特徴的である。剖検の結果,右の側頭葉中部および後部に巨大な腫瘍が認められ,右の側頭葉の大部分,頭頂葉と後頭葉の一部,右の大脳基底核の大部分とその周囲の白質,視床の一部などが壊死または軟化に陥つていた。
 本症例を中心に種々の反復症状について臨床病理学的考察をおこない,本症例の書字障害と失書との関係について若干言及した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?