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文献詳細

雑誌文献

精神医学11巻7号

1969年07月発行

研究と報告

薬物依存的な医師・患者関係—長期服薬本位神経症患者の調査から

著者: 小此木啓吾1 延島信也1 岩崎徹也1 鈴木敏生1 北田穣之介1 川上伸二1

所属機関: 1慶応大学医学部神経科教室

ページ範囲:P.550 - P.556

文献概要

Ⅰ.まえがき
 現代の神経症治療では,薬物療法が重要な役割をはたしているが,それと同時に,適切な病気理解と治療理解を患者に与え,患者が自分の病気に対して適切な態度をとれるような精神療法的はたらきかけが与えられねばならない。そして,投薬および服薬という,現代医療にとつてもつとも日常的でしかも一般的な医師・患者の交流様式も,精神療法的見地から再構成されなければならない。ところが実際の診療状況では,さまざまの現実的制約が,このような意味での理想的な神経症治療の実践を妨げているのも否定しがたい事実である。たとえば現行医療制度は,服薬が患者の病気治療にとつて,どのような位置づけにあるかについて,われわれが患者に納得のゆく説明を与える十分な時間をとることを許さない。そしてわれわれは,精神的な交流やはたらきかけの必要を痛感しながらも,そのための現実的なゆとりを得られない無力感や焦躁感に苦しみ,この矛盾からの救いを投薬にみいだそうとする。ところが,神経症患者の半数以上のものは,身体的な訴えを主とし,その結果自らも「身体的な病気ではないか」との疑問や不安をいだいているために,身体的な治療を受けることで満足し,精神面へのはたらきかけには,抵抗を示すものが多い。まして投薬と服薬が患者の不安を軽減し対症療法的な効果をもたらす場合には,われわれはそれによつて医師としての役割意識を満たし,患者も医師への期待が満たされるために,医師・患者は,ともに精神療法的な交流から疎外したかたちでの相互的充足と安心をみいだすことができる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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