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研究と報告
精神病の夫婦精神療法の経験
著者: 阪本良男1
所属機関: 1阪本病院
ページ範囲:P.615 - P.620
文献購入ページに移動I.はじめに
精神科分野における治療は,多くの精神分裂病を中心とする精神病者に,残念ながら一時的な効果をしか示さないことが多い。現在では,特殊薬物療法,身体的療法,精神療法,生活療法などが主に行なわれているが,そのうちでも最近精神療法はその示す効果のうえでも注目を集めてきていると考える。しかしこの精神療法も,患者個人に対してのみの治療は,一面では社会生活に困難を示しまた失敗したとも理解される病者に対し,再度の治療を余儀なくさせるか,または,最終的には病院内で余生を送らせざるをえなくなつてしまうこともあるのである。このような現状のなかでいろいろな理論的裏付けをもつ治療法が試みられているのである。
われわれは精神病者の社会復帰の時期に夫婦同席精神療法を行ない,完全な症状の消失のうえに,他の個人的治療よりも夫婦をとおして,より社会に適応した型での復帰を行ないえた症例を経験したので,その夫婦精神療法の経過を中心に報告したい。すなわち,一つにはこの病者の発病は結婚後のことであり,またこの夫婦共同生活のもとでの発病は,主人(病者)の実家,とくに母親との深い精神的関係にその病根を根ざしていると考えたからである。患者には入院中は特殊薬物療法とともに,作業療法,集団精神療法,および個人精神療法が行なわれたが,退院より再発時に患者の妻を同席させ4カ月にわたる夫婦精神療法を一貫した治療方針のもとに行ない,より効果的な社会復帰をみとめたのである。
精神科分野における治療は,多くの精神分裂病を中心とする精神病者に,残念ながら一時的な効果をしか示さないことが多い。現在では,特殊薬物療法,身体的療法,精神療法,生活療法などが主に行なわれているが,そのうちでも最近精神療法はその示す効果のうえでも注目を集めてきていると考える。しかしこの精神療法も,患者個人に対してのみの治療は,一面では社会生活に困難を示しまた失敗したとも理解される病者に対し,再度の治療を余儀なくさせるか,または,最終的には病院内で余生を送らせざるをえなくなつてしまうこともあるのである。このような現状のなかでいろいろな理論的裏付けをもつ治療法が試みられているのである。
われわれは精神病者の社会復帰の時期に夫婦同席精神療法を行ない,完全な症状の消失のうえに,他の個人的治療よりも夫婦をとおして,より社会に適応した型での復帰を行ないえた症例を経験したので,その夫婦精神療法の経過を中心に報告したい。すなわち,一つにはこの病者の発病は結婚後のことであり,またこの夫婦共同生活のもとでの発病は,主人(病者)の実家,とくに母親との深い精神的関係にその病根を根ざしていると考えたからである。患者には入院中は特殊薬物療法とともに,作業療法,集団精神療法,および個人精神療法が行なわれたが,退院より再発時に患者の妻を同席させ4カ月にわたる夫婦精神療法を一貫した治療方針のもとに行ない,より効果的な社会復帰をみとめたのである。
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