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文献詳細

雑誌文献

精神医学11巻9号

1969年09月発行

文献概要

研究と報告

二重盲検によるclothiapineの精神分裂病に対する薬効検定

著者: 金子仁郎1 谷向弘1 工藤義雄2

所属機関: 1大阪大学医学部精神神経科学教室 2大阪警察病院神経科

ページ範囲:P.721 - P.728

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 強力精神安定剤の第4の系列といわれるdibenzothiazepine誘導体clothiapineの精神分裂病に対する臨床効果を,chlorpromazineを標準薬とした二重盲検・比較実験法によつて調べた。2週間のプラセボー投与によつて前治療の影響を除去した後,実薬をfixed-flexible scheduleで8週間投与し経過を観察したが,「似たもの同志の組」として実験を完了したものが34組68症例,相手が決まらないまま実験期間が終つたものが9症例,実験中途での脱落が7症例であつた。
 得られた結果を逐次検定法,Whiteの順位法,x2検定法あるいは直接確率計算法(Fischer)で解析したところ,全体的な分裂病像の改善,状態像別の有効率,標的症状のパターンなどどれをとつても両薬剤間に有意差はなかつた。妄想が前景に出ている症例に対する効果発現速度が,治療開始後最初の2週間で,clothiapineのほうに速いような印象を受けたが推計学的には有意ではなかつた。
 副作用の種類も発現頻度も両薬剤間でほとんど有意差はなかつたが,重症パーキンソニスムはclothiapineのほうに有意に高率に出現した。一般臨床検査では異常はみられなかつた。
 以上clothiapineの分裂病に対する効果はchlorpromazineと臨床上きわめて類似しており,clothiapine 20mgがほぼchlorpromazine 50mgに相当すると考えられる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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