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ビンスワンガーとサナトリウム・ベルヴュの歴史
著者: 竹内直治1
所属機関: 1大府病院
ページ範囲:P.73 - P.78
文献購入ページに移動はじめに
すでにBinswangerの主要な論文と著作のいくつかが翻訳され,その学説の輪郭はほぼわれわれに理解されるようになった。しかし,学問的思想のすべてに通じることであるが,とくに19世紀の自然科学万能観に対する反立として準備され,現象学的人間学によって方法的に深化されたBinswangerの精神医学思想をより深く理解しようとする場合,この学説を築きあげたかれ自身の問題を,いわばその内的生活史をとおして考察することが重要な課題となる。これは,学説そのものの静的理解にとどまらず,その思想をみきわめ,やがて批判・修正・発展へと導くわれわれ自身の問題にもなる。このような関連を志向するものにとって,かれの著作《Erinnerungen an Sigmund Freud》と講演論文《Mein Weg zu Freud》は,きわめて重要な文献であるが,また筆者がここに紹介する《Zur Geschichite der Heilanstalt Bellevue in Kreuzlingen》は,Binswangerを臨床の実践から離れた哲学的書斎人とする誤解を正し,かれの思想形成の必然性を家族史的側面から明確にする唯一のすぐれた文献であろう。この文献は公刊されたものでなく,サナトリウム・ベルヴュの創立百年(1857〜1957)を記念して,関係知人に謹呈された小冊子である。
すでにBinswangerの主要な論文と著作のいくつかが翻訳され,その学説の輪郭はほぼわれわれに理解されるようになった。しかし,学問的思想のすべてに通じることであるが,とくに19世紀の自然科学万能観に対する反立として準備され,現象学的人間学によって方法的に深化されたBinswangerの精神医学思想をより深く理解しようとする場合,この学説を築きあげたかれ自身の問題を,いわばその内的生活史をとおして考察することが重要な課題となる。これは,学説そのものの静的理解にとどまらず,その思想をみきわめ,やがて批判・修正・発展へと導くわれわれ自身の問題にもなる。このような関連を志向するものにとって,かれの著作《Erinnerungen an Sigmund Freud》と講演論文《Mein Weg zu Freud》は,きわめて重要な文献であるが,また筆者がここに紹介する《Zur Geschichite der Heilanstalt Bellevue in Kreuzlingen》は,Binswangerを臨床の実践から離れた哲学的書斎人とする誤解を正し,かれの思想形成の必然性を家族史的側面から明確にする唯一のすぐれた文献であろう。この文献は公刊されたものでなく,サナトリウム・ベルヴュの創立百年(1857〜1957)を記念して,関係知人に謹呈された小冊子である。
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