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雑誌詳細

文献概要

展望

クレペリンとマイヤー

著者: 西丸四方12

所属機関: 1前信州大学医学部精神医学 2心理困難・心理療法研究所

ページ範囲:P.828 - P.835

Ⅰ.学問と実地の矛盾について
 近頃は我国の精神医学界も混乱を極め,新しい目標はしばらく立ちそうもなく,国外に目新しいものを求めても何もない様で,精神医学も今のところ行きづまって打開の道もみつからない。「精神医学」の展望を仰せつかって何か面白そうなことはないか探してみたが何もみつけることができない。これは実際何もないのか,私の頭が進歩性を失って物が見えなくなったのかは分からないが,本を読んでも沈滞して何もインスパイアされるところがない。それでこのごろは新しい本を棄てて,古いものを回顧しているのであるが,この様な気持になるのも年のせいかもしれない。外国でもこのごろはそういう気風があるのか,エスキロールやグリージンガーの古い本の複刻版が出て,簡単には手にすることのできない昔の本を容易に見ることができる様になったのはありがたいことであるが,まだグリージンガーをじっくり読もうという所にまでは気持が行っていない。この半年あまり,今から35年も前に読んだヤスパースの初版(1913年)の訳があるなら出してもいいという話に乗って,昔作ったノートを参考に原稿用紙に千枚ばかり清書してみて,精神医学に何の進歩があったのかという疑問に陥った。今から60年も前に出た本が,クルト・シュナイダーの最近版といくらもちがわないどころか,一層新鮮な様にさえ見えるのである。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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