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研究と報告
精神分裂病患者間に生じた異常体験の感応現象
著者: 高橋隆夫1 水野隆正1 赤座叡1 江口和夫2
所属機関: 1岐阜大学医学部神経精神医学教室 2大湫病院
ページ範囲:P.129 - P.134
文献購入ページに移動著者らは,閉鎖病棟において生活している男女合わせて100人ほどの患者達(そのなかの大半は精神分裂病患者)に接しているうちに,そのうちの特定の3人の女子患者達が,“顔を取られた”,“体の良い部分が取られた”,“頭の中のものが取られて空になってしまう”などとしつこく訴えてくるのに気づいた。しかも,そのうちの2人の患者達が,まったく別々に,同じような内容の異常体験を訴えている同一人物を対象として,“私によく似た人がいる。その人が私の顔を取ってしまった”とか,“その人が顔や頭の中のものを取られたから,私も取られてしまった”などとも訴えてくることや,これら2人の患者の訴える異常体験の内容そのものが,以前彼女達が訴えていたものとかなり相違してきていることなどから,彼女達2人の訴える異常体験の内容は,上述した同一人物のそれに感応されたものであろうと考えられるに至った。
従来より,精神分裂病患者相互間における異常体験の感応例についての報告は,分裂病共同体,folie a deux(2人での精神病),あるいは感応性精神病などといった症例を通じて数多くなされている1)3)6)。しかし,著者らの知るかぎりでは,これらの報告は主として夫婦,親子,兄弟ないしは親密な関係にある人物相互間において成立したものについてであったように思われる。
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