精神医学12巻2号

1970年02月発行

研究と報告

精神分裂病者の院内生活療法—破綻の原因

著者： 功刀弘¹ 玉井幸子¹ 水野鍾二¹ 桜井俊介¹ 佐伯桃子¹ 斉藤千賀子¹

所属機関： ¹東京天使病院

ページ範囲：P.143 - P.151

I．はじめに
　精神分裂病者に対する積極的働きかけは向精神薬の導入とあいまって多大の成果をあげつつあり，それらに関する報告も多数なされている。しかし今までの報告に共通していることは比較的恵まれた施設と人員によりなされたものか，あるいは入院患者の一部についての報告であり，わが国精神医療の大半を担っている民間中小精神病院に無縁のものが多かった。
　われわれは人員，施設ともに不十分な条件にある東京天使病院において得られた成果と問題点を40年4月から44年4月までの4年間の経験から報告する。今回はその中でも社会復帰しようと努力している分裂病者の示した数々の破綻を省みながらまとめた。本院の入院患者数と職員の構成は第1表に示した。