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早発性痴呆をめぐって
著者: 神谷美恵子1
所属機関: 1津田塾大学
ページ範囲:P.155 - P.160
文献購入ページに移動ブロイラーが精神分裂病という概念をこしらえてから,すでに60年になろうとしている。1911年に彼が“Dementia praecox oder die Gruppe der Schizophrenien”(イタリック筆者)というモノグラフィーを著したとき,彼みずから次のように記している4)。「Dementia praecox(以下D. p. とする)の概念全体がクレペリンに由来する。またわれわれは,個別症状のまとめかたと,その特徴づけをも,ほとんど彼にのみ負っている。……この概念の発生地はクレペリンのPsychiatrie第5版である」。
今日,精神分裂病の概念は,依然として有用ながら,その輪廓は,いろいろな方面から切りくずされつつあるようにみえる。このさい,その前身たる早発性痴呆の概念が,どのような源泉から,どのように形成されていったか,を通覧してみるのも,"認識論的反省"の索材として,役立つかも知れない。
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