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文献詳細

雑誌文献

精神医学12巻4号

1970年04月発行

文献概要

研究と報告

うつ病の社会的一側面—とくに発病前状況を中心に

著者: 大原健士郎1 小島洋1 岩井寛1 二本木利江1 影山節子1

所属機関: 1慈恵医科大学精神神経科

ページ範囲:P.297 - P.302

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Ⅰ.はしがき
 Kraepelin(1899)が躁うつ病という疾病単位を設け,この疾患の原因は病的素質krankhafte Veranlagungによって自動的に始まり,環境的因子や精神的打撃はたとえ患者に認められるとしても,周期の発病を促す契機にすぎないとしたことは周知のとおりである。彼の考え方の基礎には,次のような理由がある。(1)病気の経過中に,原因となったとみられる精神的・感情的打撃と関連性のない内容の妄想が出現する。(2)病像には発病直前のできごととまったくニュアンスの異なる躁的な特徴の加わることがある。(3)発病の動機となったとみられる問題を解決しても,病気は治らない。(4)同じ患者において別の動機によっても,あるいはまったく動機なしにでも躁周期やうつ周期が出現する。
 Kraepelinのこの考え方に対しては,当時でもZiehenやLipschitzのように素因だけではなく,精神的衝撃や過重な負担が発病に重要な役割りを果たすと考える者もあったが,いわゆる正統派的精神医学ではこの考え方が継承されて,現在にいたっている。しかしわれわれの臨床経験からしても,病気の経過中に原因となったとみられる精神的・感情的打撃と関連性の深い内容の妄想が出現することは少なからずあるし,彼が理由としてあげた(2)〜(4)はある種の神経症患者でもいえることである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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