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文献詳細

雑誌文献

精神医学12巻4号

1970年04月発行

研究と報告

精神病院医療についての提案

著者: 中村五郎1

所属機関: 1京都府立洛南病院

ページ範囲:P.321 - P.326

文献概要

I.はじめに
 向精神薬が出現したことは,われわれ精神科医を大いに勇気づけたが,その影響は単なる薬物療法の域を超えて精神病院そのものの在り方をすら,大きく変革するに及んだ。その後,薬物の限界が次第に明らかとなりながらも,他に代る有効な治療法の見出せないまま現在に至っている。大概の患者は,在院も非常に長く,治療の可能性は限られ,それにつれ生活上のさまざまな問題が介入するため病院精神科医は,患者生活やその環境も考慮しなければならない。
 K. Jaspersは「精神病理学総論」の終りの方で「狭義の精神病者の大多数には,本当に合理的な治療は未だ到達できない目標にとどまり,できることは,可能な範囲の治療を伴う監置と看護とで,患者と社会を保護することである」と述べているが,熱狂的な薬物信仰への夢が消え去った現在,今一度,謙虚な気持で,この言葉に耳を傾ける必要があると思う。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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