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雑誌詳細

文献概要

特集 対人恐怖

序文

著者: 新福尚武1

所属機関: 1東京慈恵会医科大学精神神経科

ページ範囲:P.364 - P.364

 もし対人恐怖がAnthropophobieの訳語だとすると,この訳はやや異例である。がん恐怖,高所恐怖などすべて「対」を付けない訳になっており,それにならえば「ひと恐怖」でなければならない。しかし,実際われわれが対人恐怖として取扱っているものは,単なるひと恐怖ではなく,もっと複雑多様のものであるので,この方がふさわしい。したがって逆に対人恐怖をAnthropophobieと直訳した場合,内容が外国人に正当に伝えられるかどうか大いに疑わしい。
 認識論的にいえば見るものは自己であり,他はすべて見られるものである。ところがその他なるものは見られるものであるとともにまた見るものであり,自己は見るものであるとともにまた見られるものである。いな,見られるだけではない。感じられるもの,評価されるもの,不快がられるもの,迷惑がられるものでもある。このことは,およそ人間が共存するところどこにおいても,変わりはないだろう。対人恐怖の生ずる基盤にはこのような普遍的現実がある。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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