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岐阜県における高齢の精神障害者についての調査
著者: 杉本直人1 星融1 森崎郁夫1 平林幹司1 天野宏一1 赤座叡2 水野隆正3 関谷重道4 三輪登久5 四十塚竜雄6 貝谷久宣7 村本幸栄8
所属機関: 1岐阜大学医学部神経精神科 2慈恵中央病院 3大湫病院 4不破関病院 5美濃加茂病院 6犬山病院 7聖十字病院 8岐阜精神病院
ページ範囲:P.445 - P.450
文献購入ページに移動日本国民の人口構成における高年齢者の比率は近時増加し,今後当分の間この傾向をなお強めるであろうと推測されている。さらに,若年層の人々が農村より都市へ集中することにより,農村部における高年齢者の比率は高くなり,いわゆる過密,過疎の問題とともに社会的に,産業的に種々の課題が提起されつつあることは周知のごとくである。医学の領域においても高年齢者の問題は老人医学の課題として反映しており,精神病学の領域では高齢の患者が改めて見直されつつある。さらにわが国においては,第2次世界大戦後,古い家族制度が破壊されるとともに家族成員の構成も変わり,いわゆる核家族(nuclear family)1)なる言葉が示すごとく,両親と未婚の子女で構成された家族が多くなり,高齢者は孤立していく傾向が強まりつつあることが都市部では窺われる反面,未だ農村部では家父長的な制度の面影が残っているのではないかと考えられる。これらの事情から考えられることは,今後相対的に増加していく高齢者の問題を精神医学的にわれわれはいかにとり上げていかねばならぬかということであろう。
既に先人により指摘されているごとく,高齢者は彼らに独得の多くの問題点を有する。肉体的にまた心理-精神的に彼らは若年者とは相違する特有な条件を有し,またとくにわが国における高齢者は現在古い家族制度の崩壊しつつある時期に生活しているということにおいて,現代の西欧先進諸国には既に見られない条件下にもあるという事情もあり,これらの諸条件が高齢者の精神病像に独得の色彩を与え,また精神障害の発現に特別な条件となっているであろうことは想像に難くない。
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