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特集 境界例の病理と治療
境界例の概念とその臨床的検討
著者: 小此木啓吾1
所属機関: 1慶応義塾大学医学部精神神経科教室
ページ範囲:P.474 - P.485
文献購入ページに移動Ⅰ.“境界例の多義性”
“境界例”というコトバが,本特集でとりあげられる背景には,何らかの意味でこのコトバを臨床的に用い,考える必要を認めるような普遍的な臨床経験が存在しているとみなすことが許されるであろう。
しかしながら,このような臨床的事実(clinical reality)に対して,この概念を使用することの可否については,なお未だに,必ずしも一致した見解が得られているとはいえないように思われる。つまり,本特集には,この概念に対する賛否いずれの立場をも含んだ討議が期待されるのであるが,このような討議を発展させるには,まずそれに先立って,それぞれの立場から,この概念の意味するところを明確にし合うことが要請される。なぜならば,境界例に関する臨床的事実は,漠然とは,各人に共通した臨床経験として知られているにもかかわらず,ひとたびそれを一つの精神医学的概念として明確化しようとすると,その含蓄は,きわめて多義的であいまいであり,この多義性が,本概念の使用の可否をめぐる判断や評価さえも大きく左右しているからである。
“境界例”というコトバが,本特集でとりあげられる背景には,何らかの意味でこのコトバを臨床的に用い,考える必要を認めるような普遍的な臨床経験が存在しているとみなすことが許されるであろう。
しかしながら,このような臨床的事実(clinical reality)に対して,この概念を使用することの可否については,なお未だに,必ずしも一致した見解が得られているとはいえないように思われる。つまり,本特集には,この概念に対する賛否いずれの立場をも含んだ討議が期待されるのであるが,このような討議を発展させるには,まずそれに先立って,それぞれの立場から,この概念の意味するところを明確にし合うことが要請される。なぜならば,境界例に関する臨床的事実は,漠然とは,各人に共通した臨床経験として知られているにもかかわらず,ひとたびそれを一つの精神医学的概念として明確化しようとすると,その含蓄は,きわめて多義的であいまいであり,この多義性が,本概念の使用の可否をめぐる判断や評価さえも大きく左右しているからである。
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