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特集 境界例の病理と治療
おわりに
著者: 畑下一男1
所属機関: 1関東労災病院神経科
ページ範囲:P.500 - P.500
文献購入ページに移動 “境界例”というテーマで企てられた本特集に参加すべく用意された諸氏の論文に目を通しながら,あれこれ考えさせられつつも,わたしがちらちらと脳裡に思い浮べていたことは,あの例,この例と,わたし自身が経験した臨床例のことであった。諸氏が論文にとりあげているような例や状況は,わたしも臨床的に経験してきたことである。ただ,そういってしまえば,わたしの不勉強をさらして,身も蓋もなくなってしまうけれど,わたしにとって“境界例”という概念は,あまり使用したことがない不馴れな概念であって,このさい,この特集をとおして学びたいと思っていたことなのである。その意味では,小此木氏の序論は,啓蒙的な好論文であった。わたくしは,臨床的にSchizophrenieという診断を慎重に用い,“境界例”に相当する例には暫定的に“schizophren”という形容詞を使用してきた。小此木氏が,Schmidebergらとともに,“境界例”をclinical entityとして,その存在妥当性を認めようとしていることは,わたしの経験からしても,たしかにSchizophrenieになることなく長年にわたってschizophrenである例のなかに,その類似例があることから,是認できそうである。ただ,そういったからといって,Schizophrenieの正体が明らかにされないかぎり,所詮は宙ぶらりんという憾はまぬかれない。
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