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特別論文 精神医学の基本問題—精神病と神経症の構造論の展望
第2章 2人の隠れた先駆者—カールバウムとジャクソン
著者: 内村祐之12
所属機関: 1東京大学 2財団法人神経研究所
ページ範囲:P.564 - P.572
文献購入ページに移動近代精神医学の研究者として,グリージンガーとシャルコーの2人が花々しい創始者的役割りを演じたことは前章に述べた通りである。この2人の精神が,いかに引き継がれたかを見るためには,グリージンガーの意図を継承したウェルニッケを,またシャルコーの門弟であったババンスキー,ジャネ,フロイトらを紹介するのが順序であるが,年代順で行くと,前2者と,これらの人々との中間に,2人の特異な人物がいる。そこで本章では,この2人をまず取上げてみよう。
この2人の人物とは,K. L. カールバウムとH. ジャクソンである。この2人の間には奇しくも幾つかの共通点があるが,その中で最も顕著なのは,ジャクソンの神経学的業績を除き,この2人の精神医学上の発表が,その生前にはほとんど反響を呼ばなかったことであり,しかも後来,これが再発見されて,現代の精神医学への貴重な寄与となっていることである。なお両者とも,生前,その実力にふさわしい社会的地位を得なかったことにおいても共通している。
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