文献詳細
研究と報告
分裂病者の母親のCommunication
著者: 井村恒郎1 川久保芳彦1 望月晃1 三須秀亮1 牧原浩1
所属機関: 1日本大学医学部精神神経科教室
ページ範囲:P.579 - P.585
文献概要
われわれは数年来,分裂病家族の問題を家族内の対人関係という面から明らかにしようと心がけた。そのため,対人関係の障害を推測することをめざした特殊なテストを用い,分裂病家族成員間の対人関係における相互理解に関してICLの変法により,また,共感性(empathy)に関して音調テストにより,研究を行なった。その結果を総合してみると,家族成員のうち,患者は直接的な感情移入および観念的なレベルでの対人関係の理解は良かったが,父親は前者に欠け,後者は母親よりも良い。一方母親は直接的な感情移入は正常者と差はないが,観念的なレベルでの対人関係の理解が歪んでいる。これらのことから両親ともそれぞれ相異なったレベルでcommunicationの受容面の欠陥を示し,この欠陥をもった両親の営む家族における成員間の関係は,複雑で微妙な矛盾を含むのではないかと推測される。しかし,ここに述べたことは感情移入(共感)の能力および対入的理解の能力を,円滑な対人関係の営まれる前提条件の一つと考えて行なった研究であり,いわばcommunicationにおける受容の面に関係したテスト結果である。この結果は表出ないし表現の面に影響するはずであるが,それはどのような形であらわれるであろうか?また,患者に及ぼす影響という点からみても,表現の面の障害を不問のままに取り残すわけにはゆかない。
このような見地から,母親と患者のcommunicationの様態を追求することにした。
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