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特別論文 精神医学の基本問題—精神病と神経症の構造論の展望
第3章 ウェルニッケとクレペリンの精神医学とその反響(附 ホッヘの症候群学説)
著者: 内村祐之12
所属機関: 1東京大学 2財団法人神経研究所
ページ範囲:P.662 - P.670
文献購入ページに移動グリージンガーが近代の精神医学の創始者的役割りを演じたこと,また「精神病は脳病である」という根本理念の上に立って,精神医学を近代的な科学研究の対象にしようと努力し,その闘志と相まって革命的とも言える影響を精神医学界に及ぼしたことは,第1章に述べた通りである。しかし彼はウィルヒョーと同時代の人であったから,当時の脳解剖学や脳病理学の知識の程度をもってしては,その思想に確固たる基礎を与えることが,はなはだ,むずかしかった。
ところで脳の微細構造とその機能との関係を追求する手段として,その後,盛んに進められたのは,脳の線維結合に関する研究であったが,当時のウィーンの精神科教授テオドール・マイネルトは,自ら脳線維解剖学の研究を推進し,その結果に基づいて脳の機能を説明し,さらに,これによって精神病の分類までをも試みた最初の人として知られている。しかし精神病の分類についての彼の研究は完結を見ないままで終わったが,マイネルトの門下生の中に,彼を尊敬する1人の天才が現われて,グリージンガーとその師との思想を発展させ,独特の体系を作り上げて,クレペリンに拮抗する一時期を作り上げた。それがカール・ウェルニッケである。
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