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文献詳細

雑誌文献

精神医学12巻8号

1970年08月発行

研究と報告

分裂性幻聴—その消失過程を通しての一考察

著者: 大森健一12

所属機関: 1神経研究所 2東京医科歯科大学精神神経科

ページ範囲:P.679 - P.687

文献概要

I.はじめに
 現在も分裂性幻聴は精神科医の深い関心と興味をひきつけている現象の一つである。それはEsquirolの対象なき知覚の確信という簡明な定義により学問的対象としての意味を有して以来,感覚生理学的方面,脳病理学的方面の研究においてさまざまな実を結び,K. Jaspersの精密な記述的現象学的理論へと発展した。しかしそこにおいては幻覚の形式と内容は峻別され,了解性という限界が引かれることになった。
 一方力動的研究は主として幻覚の内容と関連した発展を示して対人関係を基礎とした幻覚論が述べられるに至った。例えばH. S. Sullivanは,安全欲求による不安や葛藤の象徴化で,安全な人間関係を再獲得しようとする表現ととらえており,またF. Fromm-Reichmannによれば,幻覚が知覚に突入した強力な抑圧や解離された衝動によることが真実ならば,すべての幻覚は過去と最近の現実の体験に基礎をおいていることになると述べている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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