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文献詳細

雑誌文献

精神医学12巻8号

1970年08月発行

研究と報告

心理劇における“時”の意味

著者: 増野肇1 関田ひろみ1 中野隆夫2 増野信子2 藤川美智子2

所属機関: 1東京慈恵会医科大学精神神経科 2初声荘病院

ページ範囲:P.689 - P.695

文献概要

I.はじめに
 Moreno, J. の創始した,心理劇と呼ばれる精神療法は,最近になってわが国でもいくらか試みられるようになった。彼の独特の理論には,いくらか理解しがたい点もあるが,彼自身がのべている広い意味での心理劇を考えるなら1),各治療者による視点を持った方法があってかまわない。Anzieu, D. 2)にしろCorsini, R. J. 3)にしろ,それぞれ独自の理論のもとに心理劇を行なっている。著者が初声荘病院で,心理劇を治療の手段としてとりあげてから6年になる。精神病院の患者を対象とする実践のなかで方法論的にも試行錯誤を重ね,慢性の分裂病を対象にする場合と,神経症や境界線症例を対象とする場合とでは方法も異なるようになってきているが,理論については,小此木のいう“構造と操作”という概念4)をかりて,その位置づけを行なった5)。そして,昨年の第66回精神神経学会総会では,精神療法と生活療法の接点に心理劇をおいて説明しようとした6)7)
 広義の精神療法における治癒という変化を考えると,その変化をうながす働きかけを大きく2つにわけて考えることができる。1つは人間関係(主として治療者との)であり,もう1つは状況である。この両者はともに治療の手段として用いられるが,どちらを重視するかで2つの方向が考えられる。すなわち,精神分析では前者に,生活臨床や森田療法では後者に重点がおかれる。ところが,心理劇はこの両者をともに重視することによって両者の接点に立つことになる。監督による治療的操作は,補助自我を通しての人間的働きかけと,舞台の上での状況をどう設定していくかということの2つにかかっている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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