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文献詳細

雑誌文献

精神医学13巻1号

1971年01月発行

研究と報告

精神分裂病の病状期中に生じた異常体験反応

著者: 高橋隆夫1 平林幹司1 四十塚龍雄1

所属機関: 1岐阜大学医学部神経精神医学教室

ページ範囲:P.39 - P.44

文献概要

I.序言
 精神状態の改善が行なわれ,対人的な接触もかなり円滑に行なわれるような状態にまで回復していたKという精神分裂病者が,ある時期から無気力な状態となって,対人的な接触を避けようとする態度を取るようになり,時には独りで何事かを考え込んでいるといった様子を呈するに至った.この時期には,面接を行なっても疎通性は乏しく,問診にも形式的,表層的に応じているという感じであった.その後,彼は再び元気を取戻し,“あの頃,病気が悪くなっていた”とか“当時,自分はあることに非常に苦しめられていた”などということを,自ら語ってきた.
 彼が語るところによれば,この精神的苦脳は,“あることを契機として生じた”ものであり,“その契機となった状況が消失するとともに消え去っていった”とのことである.彼は,この精神的苦脳をきたす以前より,分裂病体験を抱き続けていたのであるが,この苦悩に悩まされている時期においても,またこの苦悩が消失してしまってからも,彼の分裂病体験の変化はわれわれには感じられなかった.また彼は,この時期の苦悩を,“分裂病の悪化によるもの”として捉えてはいたものの,この苦悩は,彼に分裂病体験に対する場合とはまったく異なった態度を取らせていたということが,彼の言葉から明らかとなった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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