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文献詳細

雑誌文献

精神医学13巻10号

1971年10月発行

文献概要

特集 内因性精神病の生物学的研究

精神分裂病の行動学的研究

著者: 町山幸輝1

所属機関: 1東京大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.967 - P.975

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I.分裂病研究における行動学的接近
 こころは内的には体験として,外的には行動として現象する。体験は他の人には直接のぞくことのできない主観的な過程であり,行動は外部から直接観察可能な客観的な現象である。我々は他の人のこころを体験の言語による報告と行動として身体的に表現されたものとから推測する。こころは言葉によってもっとも効率的に表現されるが,その表現は常に適切で信頼しうるとはかぎらない。言語報告にもとづく推測は行動によって修正される必要がある。言語報告ほど精細ではないにしても,行動はより確実にこころを反映する。幼児や無言症の患者などのように体験の言語表現がえられない相手と接する場合,我々が相手のこころをおしはかるための唯一の手がかりは相手の行動である。
 行動はこころの身体的な表現であり,客観的な事実であるから,行動を指標とすると,体験や言葉の問題から完全にはなれて,こころを客観的,生物学的にとりあつかうことが可能になる。さらに人間の体とこころを進化論的に考察し,それらと生物学的に相同の構造と機能が,はるかに単純ではあるにしても,動物にも存在すると考えるならば,こころの生物学的解析を動物において行なうことが可能になる48)。元来,人間における行動学的研究はその起源を動物の行動研究の二つの流れにたどることができる。一つはDarwin, C. からLorenz, K. にいたる習性学(ethology)51)の流れであり,他はPavlov, I. P. からSkinner, B. F. にいたる行動主義と学習理論のそれである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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