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特集 内因性精神病の生物学的研究
臨床脳病理学と内因性精神病—身体的基礎を有する精神病における内因性精神病像を中心に
著者: 浜中淑彦1
所属機関: 1京都大学医学部精神神経科学教室
ページ範囲:P.1009 - P.1020
文献購入ページに移動I.はじめに
臨床脳病理学の課題を器質性局在性脳病変によって生ずる精神神経症状の研究に限定するならば,内因性精神病を研究する直接的方法として臨床脳病理学を直ちに思い浮かべる精神医学者は今日ではほとんどいないであろうし,それのみか19世紀の自然科学的素朴身心論を背景として生まれた「精神病は脳病なり」―序ながらこれはGriesingerの言葉とされているが,彼自身の思想はこの一言のみで代表させてしまい得る程素朴でなかったことは,最近 R. Jungに引用された,ほとんどpoetischと言ってよい程の次の一文に見てとれるであろう:"WÜB-ten wir auch Alles, was im Gehirn bei seiner Thätigkeit vorgeht, könnten wir alle chemischen, electrischen etc Processe bis in ihr letztes Detail durchschauen…was nützt es? Alle Schwingungen und Vibrationen, alles Electrische und Mechanische ist dochimmer noch kein Seelenzustand, kein Vorstellen. Wiees zu diesem werden kann…dies Rätzel wird wohlungelöst bleiben bis ans Ende der Zeiten, und ichglaube, wenn heute ein Engel vom Himmel kämeund was AIles erklärte, unser Verstand wäre gar nicht fähig, es nur zu begreifen!"―という言葉を文字通りに確信している人もそう多くはなかろう。このことを念頭においた上で,ここでは身体的基盤を有する精神病に関する1960年代後半の文献の展望を試みたい。それ以前についてはConrad(1960),Scheid(1960),大橋(1965),保崎(1966)らの綜説がある。
臨床脳病理学の課題を器質性局在性脳病変によって生ずる精神神経症状の研究に限定するならば,内因性精神病を研究する直接的方法として臨床脳病理学を直ちに思い浮かべる精神医学者は今日ではほとんどいないであろうし,それのみか19世紀の自然科学的素朴身心論を背景として生まれた「精神病は脳病なり」―序ながらこれはGriesingerの言葉とされているが,彼自身の思想はこの一言のみで代表させてしまい得る程素朴でなかったことは,最近 R. Jungに引用された,ほとんどpoetischと言ってよい程の次の一文に見てとれるであろう:"WÜB-ten wir auch Alles, was im Gehirn bei seiner Thätigkeit vorgeht, könnten wir alle chemischen, electrischen etc Processe bis in ihr letztes Detail durchschauen…was nützt es? Alle Schwingungen und Vibrationen, alles Electrische und Mechanische ist dochimmer noch kein Seelenzustand, kein Vorstellen. Wiees zu diesem werden kann…dies Rätzel wird wohlungelöst bleiben bis ans Ende der Zeiten, und ichglaube, wenn heute ein Engel vom Himmel kämeund was AIles erklärte, unser Verstand wäre gar nicht fähig, es nur zu begreifen!"―という言葉を文字通りに確信している人もそう多くはなかろう。このことを念頭においた上で,ここでは身体的基盤を有する精神病に関する1960年代後半の文献の展望を試みたい。それ以前についてはConrad(1960),Scheid(1960),大橋(1965),保崎(1966)らの綜説がある。
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