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文献詳細

雑誌文献

精神医学13巻11号

1971年11月発行

文献概要

研究と報告

d-Chlorpheniramineの抗うつ作用について—臨床的検討(第1報)

著者: 田縁修治1 岡田導夫1 内沼幸雄1 竹村紀夫1 椙村憲之1

所属機関: 1関東逓信病院精神科

ページ範囲:P.1059 - P.1066

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Ⅰ.まえがき
 Imipramine(Tofranil)のうつ病に対する治療効果がKuhn, R. 1)(1957)やKielholz, P. ら2)(1958)によって報告され,うつ病の薬物療法に画期的な前進がもたらされた。これが端緒となって,imipramineに構造が近縁な種々な誘導体のうちからあいついでうつ病に有効な薬剤が見出され,抗うつ剤(antidepressant drugs)あるいは感情調整剤(thymoleptica)としての地歩を確立し,今日ではうつ病治療の主流はかつての電撃療法や持続睡眠療法から離れて,全く抗うつ剤による薬物療法に移ってしまったといえる。
 またこれら一群の抗うつ剤の臨床作用が確認されるとともに,その薬理作用も検索され,今日では抗うつ剤が,chlorpromazineなどの神経遮断剤(neuroleptica)やamphetamineなどの中枢刺激剤(central stimulants)などとは全く異なった独自の薬理作用を示すことが知られている。このうち現在もっとも抗うつ剤の作用に本質的と考えられているものにレセルピン逆転作用(reserpine reversal)がある3)。すなわち,動物にreserpineを投与すると,眼瞼下垂,縮瞳,自発運動の減退,低体温,カタレプシーなどの一連の症状が起こるが,この動物に予め抗うつ剤を前投与しておくか,あるいは後になって投与すると,これらの症状は発現しないか,いったん発現したものの消退したり,時によっては逆転して眼瞼開大,散瞳や自発運動の増加,高体温をきたすことがあるという事実である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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