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特集 社会変動と精神医学
企業のなかの精神衛生
著者: 小西輝夫12
所属機関: 1松下電器健康管理センター 2松下病院神経科
ページ範囲:P.1163 - P.1167
文献購入ページに移動「企業のなかの精神衛生」(「産業精神衛生」)をぬきにして,これからの総合精神医療を語ることはできないであろう。なぜなら,精神障害回復者の社会復帰が精神衛生の実際的な中心課題のひとつであり,現実には企業(産業)との関係を無視してそれを考えることはできないからである。にもかかわらず,産業精神衛生は,精神医療体系のなかでその市民権を完全に得ているとはいいがたい。それは産業精神衛生に対する次のような批判からもうかがうことができる。
すなわち,岡田および小坂1)は,大企業における産業精神衛生とは,精神衛生の名のもとに精神障害者に対する差別を合理化しようとする動きであるとし,そこでは「精神障害者を企業から排除しよう」として,「職場に不満をもつことも,精神障害とみなすような項目」をふくんだ「あやしげなチェック・リストがいくつもつくられ」,「組合活動家に精神障害のレッテルをはって追い出すようなことも,産業精神衛生の名でおこなわれている」ときびしく非難している。企業の精神衛生に関与しているわれわれ(仮に産業精神科医と呼んでおく)としては,治療医的立場にある精神科医の忠告にはつねに謙虚でありたいと思っているが,精神衛生に名をかりた組合活動への干渉など,およそ想像もできないことが産業精神衛生に対する不信と疑惑の例証としてあげられていることに,産業精神衛生がおかれている立場のむずかしさを痛感するのである。
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