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展望
前頭前皮質(Prefrontal Area)の機能に関する業績展望
著者: 佐藤光源1 池田久男1
所属機関: 1岡山大学医学部神経精神医学教室
ページ範囲:P.296 - P.312
文献購入ページに移動I.はじめに
精神機能の高位統合部位として,あるいは人格と密接な関連をもつ脳部位として,前頭葉,とりわけ前頭前皮質が古くから注目されてきた。そして現在もなお,その機能の解明は重要な課題として残っている。これまでの多数の研究にもかかわらず,前頭前皮質の機能が明確でないことにはいくつかの理由が考えられる。なかでも大きな理由の一つは,動物実験にもちこむ際の問題であり,動物の前頭前皮質の領野規定と,精神機能の統合という複雑な精神現象のとらえ方の,二つの基本的な問題が未解決であったことによろう。しかし,前者は機能を重視した解剖学的研究の進歩により,後者は行動科学的接近により次第に解決されてきた。これまで,前頭前皮質に関する実験は多数あるが,その機能を知る上で特に重要なものは,1936年Jacobsen64)が行なった猿の破壊実験であろう。彼はこの実験で遅延反応(delayed response)が特異的に障害されることを最初に発見している。
この遅延の障害はその後,前頭前皮質の機能を知る重要な糸口として取りあげられ,現在まで主要な研究対象となってきた。
精神機能の高位統合部位として,あるいは人格と密接な関連をもつ脳部位として,前頭葉,とりわけ前頭前皮質が古くから注目されてきた。そして現在もなお,その機能の解明は重要な課題として残っている。これまでの多数の研究にもかかわらず,前頭前皮質の機能が明確でないことにはいくつかの理由が考えられる。なかでも大きな理由の一つは,動物実験にもちこむ際の問題であり,動物の前頭前皮質の領野規定と,精神機能の統合という複雑な精神現象のとらえ方の,二つの基本的な問題が未解決であったことによろう。しかし,前者は機能を重視した解剖学的研究の進歩により,後者は行動科学的接近により次第に解決されてきた。これまで,前頭前皮質に関する実験は多数あるが,その機能を知る上で特に重要なものは,1936年Jacobsen64)が行なった猿の破壊実験であろう。彼はこの実験で遅延反応(delayed response)が特異的に障害されることを最初に発見している。
この遅延の障害はその後,前頭前皮質の機能を知る重要な糸口として取りあげられ,現在まで主要な研究対象となってきた。
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