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文献詳細

雑誌文献

精神医学13巻6号

1971年06月発行

文献概要

研究と報告

肝脳疾患特殊型を疑われた2症例について—脳波と臨床症状の相関ならびにネオマイシンの効果

著者: 小倉正己1 田中恒孝1 斎藤正武1 宮下俊一1

所属機関: 1信州大学医学部神経科学教室

ページ範囲:P.603 - P.610

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 臨床的に肝脳疾患特殊型を疑われる2症例について脳波所見と臨床像の相関を検討し,さらにNeomycinを経口的に投与してその治療効果を調べ次の結果を得た。
 1)脳波は基礎律動にもとづいて,α1:9c/s以上のα波が律動的に現われθ波の混入の目立たぬ,α2:8C/Sの緩徐α波にθ波が混入し律動性の乱れる,θ1:6〜7c/sθ波が比較的律動的に現われる,θ2:4〜5c/sの不規則θ波に小量のδ波が混在する,δ1:2〜3c/sの不規則δ波にθ波が混在する,δ2:1〜3c/s高振幅δ波が持続するパターン,の6つに分類できた。
 一方,意識水準の程度をI期:意識清明,II期:無欲状で自発性を欠き,抑うつ的か多幸・多弁など感情,意欲面の障害の目立つ時期,III期:傾眠的で注意集中困難を示し,頭痛,顔面のほてり,手指の振戦のみられる時期,IV期:失見当,精神運動興奮,思考散乱が著明で,のちに健忘を残す時期に分類された。
 2)意識障害の程度の進行にほぼ平行して,脳波の基礎律動もα波→θ波→δ波へと漸次周期が延長していく傾向がみられた。
 3)基礎律動がθ1からθ2を示す時期から前頭優位両側同期性の150〜200μV,2.5c/s程度の高振幅大徐波が律動的に群波をなして出現しはじめ,基礎律動がおそくなるにつれてその発現頻度を増して汎性化し,ついには脳波全体が高振幅δ波でおおわれるようになった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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