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雑誌目次

雑誌文献

精神医学13巻7号

1971年07月発行

雑誌目次

巻頭言

研究夜話

著者: 山村道雄

ページ範囲:P.658 - P.659

Dynamische Psychiatrie, Jg. 2H. 1/2, 1969に掲載されたMartin Grotjahnの論文Das analytische Gruppenerlebnis im Rahmen der psychotherapeutischen Ausbildungには,序文として次の様に述べられている。即ち
 Man hat von drei Phasen gesprochen, welche der Psychiater auf seinem Weg zur Reife durchläuft:Junge Psychiater reden von ihren Fallen;etablierte Psychiater reden von Geld, wie man es verdienen kann, wie man es sicher investieren kann, wie man es richtig verwenden kann;ältere Analytiker reden fiber sich selbst. Das ist einer der Grunde dafur, daβ……….

展望

精神医学の立場からみた霊長類の行動異常の研究

著者: 臺弘

ページ範囲:P.660 - P.672

I.はじめに
 精神医学の立場から霊長類の研究の意義を積極的に認めている精神科医は,現在においては決して多くはない。むしろ誠に少ないというべきであろう。それは一つには,精神医学に深く流れている精神至上主義ないしは非生物主義ともいえる傾向と——これが粗雑な言い方であることは私も承知しているが——,二つには,従来の身体病に対して行なわれてきた実験医学的な分析方法が生物学的研究方法のすべてだと思われていて,それが精神障害の研究や治療に十分な成果を上げるに至っていないという事情に関係している。
 私は精神医学と精神科医療の現在の主流が,精神障害を患者から離れた病気としてではなく,一人の人間のあり方として理解し,患者に対して社会的・心理的な関与をすることに,大きな意味をおいていることを十分に認めているが,それが反生物学的傾向をとるならば,すでに一種の反動現象であって,早晩また行きづまるだろうということを深く感じているものである。

特別論文 精神医学の基本問題—精神病と神経症の構造論の展望

第12章 アンリ・エイの器質力動学説

著者: 内村祐之

ページ範囲:P.674 - P.683

精神医学における一元論と二元論
 今まで述べてきたところからもわかるように,精神医学の基本問題ことに精神障害の発生と構造とに対しては,時代の嗜好により,研究者の傾向により,また関係科学分野の進歩の水準によって,種々異なる考え方があった。そしてこのような異なる意見の存在自体が,すべての専門家を納得させるような定説のないことを示すものでもあるのである。
 精神医学が宿命として担うもの,そして各時代を通じて研究者間の議論の対象となった課題の1つは,身体と精神との相関の問題である。ことに精神障害の成立を,身体と精神とのいずれかの面から一元論的に把握すべきか,あるいはその両面から二元論的に理解すべきかの問題は,研究者によって大いに意見の分かれるところであった。20世紀初頭の脳病理学の進歩は,身体疾患ことに脳疾患の結果として精神病の発呈することを明らかにしたが,この分野でも,疾患自体と精神症状との相関関係の詳しい点に至っては,今日なお不明のことが多い。

研究と報告

知能指数による精神薄弱の分類について

著者: 中田修 ,   小田晋

ページ範囲:P.685 - P.691

 われわれは知能指数による精神薄弱の分類に関して文献的考察をおこなった。得られた結果を要約すればつぎのとおりである。
 1.知能指数による精神薄弱の分類は英語圏とくにアメリカに著しく普及している。
 2.ドイツ語圏では,この種の分類に対して消極的ないし拒否的態度が今日まで長く持続している。しかし最近,そのような態度が緩和されるきざしが感じられないわけではない。
 3.今日広く採用されている,知能指数による精神薄弱の3段階分類のたいていはTerman(1916)の分類から派生したと考えて差支えないであろう。
 4.比較的最近,はじめて4段階分類が出現し,それが国際的に普及しつつある。
 5.わが国の戦後の精神医学の教科書,官庁の通達などのほとんどが知能指数による精神薄弱の分類を採用ないし紹介しているが,わが国の精神医学界においてはこの問題についての統一的な見解がまだ確立していない。

甘えと攻撃—第2報 攻撃者の対象関係

著者: 福島章

ページ範囲:P.693 - P.700

 1)攻撃的な1処遇困難受刑者の精神療法過程を報告して若干の考察を加えた。
 この若年受刑者においても,攻撃性と強い甘え欲求が緊密に結びついていることが明らかにされた。治療によって彼が攻撃性や盗癖を統禦できるように変化した契機は,自己の未熟な甘え欲求を自覚し,洞察することであったと考えられた。
 2)他者に対する対象関係のあり方によって,攻撃者を5つのタイプに分け,若干の考察を試みた。それは,α)対象欠如者,β)不全者,γ)あまえ=攻撃者,δ)エディプス型攻撃者,ε)自我同一性危機攻撃者,の5型である。
 3)各型の生育史的対象関係の特徴および攻撃における攻撃者-被害者関係の特徴を素描し,精神療法の可能性に言及した。

社会復帰の社会学—分裂病者の社会的適応についての基本的構造

著者: 榎本稔

ページ範囲:P.701 - P.709

I.はじめに
 最近十数年間,向精神薬の長足の進展と,いわゆる生活療法的アプローチにより,分裂病者の社会復帰は強力におしすすめられてきている。幸い,労働力不足の社会状況は分裂病者の就労を容易にし,社会復帰の大きな促進的要因をなしている。
 しかしながら,われわれが社会復帰あるいはアフター・ケアの臨床において最も苦慮するところは,現実社会における病者の心理状況,異常行動による生活の破綻,あるいは疾病の再燃増悪等の予測が著しく困難なことである。現在の精神病院での社会復帰方法論は,社会から隔離された病院内における,病者の心理や行動特性に基づいて方針をたてており,病者の復帰してゆく社会の構造・機能や規範との関連を等閑にしている。

急性間歇性ポルフィリン症の2症例—その臨床経過とポルフィリン精神病について

著者: 八木和一 ,   針貝正純 ,   新里邦夫

ページ範囲:P.711 - P.719

I.はじめに
 ポルフィリン症は尿中に多量のポルフィリン体,およびその前駆物質を排泄する先天性代謝異常疾患の一つであり,骨髄性ポルフィリン症と肝性ポルフィリン症に分類されている1)
 肝性ポルフィリン症は,さらに急性間歇性ポルフィリン症(acute intermittent porphyria,以下AIP),混合型または異型ポルフィリン症(mixed or variegated porphyria,以下VP),肝性皮膚ポルフィリン症(porphyriacutanea tarda hereditaria),遺伝性コプロポルフィリン症(hereditary coproporphyria,以下HCP)などに分類されている2)。これらの分類の中で最も頻度の高いものはAIPであり,臨床的に腹部症状,神経症状,精神症状を呈するといわれている3)。しかし,実際にはこれらの症状が種々組み合わされて病期や症例によって多彩な症状を呈するために種々の疾患と誤診されやすい2)。発病年齢は本邦症例では15歳から62歳にわたり,その約半数は20歳代に発病している。女性に頻度が多く,男女比は,ほぼ2:3である。しかし,性に無関係の優性遺伝を示すといわれている3)〜5)

精神分裂病様ついでSMON様症状を呈したSheehan症候群の1例—とくにMexaform投与と発症との関連について

著者: 小宅洋 ,   長谷川渙 ,   前田利男

ページ範囲:P.721 - P.727

I.序言
 各種の内分泌疾患で精神症状を呈するものは多いが,Sheehan症候群もヒステリー,精神病,脳炎などと診断されることが多い。また腫瘍などによる以外は,その生存中の診断もかなり困難なようである。
 著者らは,たまたま精神分裂病の疑いで入院加療中にMexaform投与後いわゆるSMON様症状を発現し,副腎皮質ホルモンなどを投与したところ,精神分裂病様症状が劇的に消失したが,剖検によってSheehan症候群であった1例を経験した。ここにその1例を報告し,同時に最近問題となっているQuinoformとSMON様症状発症との関連について,若干の考察をおこないたい。

向精神薬長期連用の副作用:肝障害について—向精神薬10年以上連用者103例の肝機能検査を中心に

著者: 斎藤雅 ,   内村英幸 ,   島崎福馬

ページ範囲:P.729 - P.737

I.はじめに
 向精神薬による精神障害の治療がはじまってすでに十数年になるが,その当初から副作用としての肝障害・造血機能障害・錐体外路障害などが注目され,わが国でもこれらに関する多くの報告がなされてきた。
 現在,われわれは日常の臨床において,精神障害の治療の大部分を向精神薬に依存しており,特に急性期における向精神薬の大量療法,慢性期や覚解後の向精神薬長期連用などに際しては,その副作用に充分気を配りながら投薬を行なっている。ところが,向精神薬長期連用の副作用に関する報告は数多くなされていても,長期連用という場合の期間がまちまちであり,とりわけ向精神薬を10年以上連用している症例の副作用に関するまとまった報告はいまだなされていない。

二重盲検調査による向精神薬Flupentixolの精神分裂病に対する薬効検定

著者: 石丸寅之助 ,   久保摂二 ,   石川博也 ,   日域昭三 ,   河村隆弘 ,   木村進匡 ,   兒玉秀敏 ,   升田慶三 ,   三宅安三郎 ,   野村昭太郎 ,   佐々木敏弼 ,   下永和洋 ,   津久江一郎 ,   浅田成也

ページ範囲:P.739 - P.746

 Flupentixolの精神分裂病に対する薬効を検定するため,対照薬としてperpheazineを用い,二重盲検法による試験を行なった。
 主に慢性か周期性に経過した破瓜型精神分裂病で,作業療法の準備段階にある入院患者38組76例を対象に選んだ。原則としてfluphentixolは1日維持量6mgを8週間にわたって投与し,perphenazineは1日維持量36mgを投与し,両薬剤の効果を比較した。
 Perphenazineを投与した1例が投与開始2週以内に病状が悪化して脱落し,この症例ではkey cardを早く開票した。Flupentixol投与の他の組の1例は,投与5週後に心電図に異常を認めたため,他の薬剤に変更したので,これら2組を除いた72症例36組について薬効を比較した。
 Armitageの逐次検定法を用い,相対的概括判定,全般的改善度について5段階評価と,広大式精神症状評価尺度による投与前後の評価点の差を用い,両薬剤の優劣を統計的に検討したが,治療効果はいずれかの薬剤で優劣があるとは統計的に認められなかった。すなわち,flupentixolは主に慢性分裂病に対する向精神薬として,少なくともperphenazineと同様に臨床的有用性があると考えられた。さらに,両薬剤投与群の改善度の分布についても比較検討したが,統計的に有意の差は認められなかった。

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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