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研究と報告
社会復帰の社会学—分裂病者の社会的適応についての基本的構造
著者: 榎本稔1
所属機関: 1成増厚生病院
ページ範囲:P.701 - P.709
文献購入ページに移動I.はじめに
最近十数年間,向精神薬の長足の進展と,いわゆる生活療法的アプローチにより,分裂病者の社会復帰は強力におしすすめられてきている。幸い,労働力不足の社会状況は分裂病者の就労を容易にし,社会復帰の大きな促進的要因をなしている。
しかしながら,われわれが社会復帰あるいはアフター・ケアの臨床において最も苦慮するところは,現実社会における病者の心理状況,異常行動による生活の破綻,あるいは疾病の再燃増悪等の予測が著しく困難なことである。現在の精神病院での社会復帰方法論は,社会から隔離された病院内における,病者の心理や行動特性に基づいて方針をたてており,病者の復帰してゆく社会の構造・機能や規範との関連を等閑にしている。
最近十数年間,向精神薬の長足の進展と,いわゆる生活療法的アプローチにより,分裂病者の社会復帰は強力におしすすめられてきている。幸い,労働力不足の社会状況は分裂病者の就労を容易にし,社会復帰の大きな促進的要因をなしている。
しかしながら,われわれが社会復帰あるいはアフター・ケアの臨床において最も苦慮するところは,現実社会における病者の心理状況,異常行動による生活の破綻,あるいは疾病の再燃増悪等の予測が著しく困難なことである。現在の精神病院での社会復帰方法論は,社会から隔離された病院内における,病者の心理や行動特性に基づいて方針をたてており,病者の復帰してゆく社会の構造・機能や規範との関連を等閑にしている。
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