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研究と報告
炭酸リチウム使用に関連して全般性けいれん発作を起こした1躁うつ病例
著者: 岸本朗1 中尾武久1 小松原孝介2 大熊輝雄1
所属機関: 1鳥取大学医学部神経精神医学教室 2町立西伯病院
ページ範囲:P.57 - P.63
文献購入ページに移動リチウムがCade(1949)4)によって精神病の治療に導入されてから約20年を経過したが,とくに近年になってリチウムが躁うつ病の躁状態の治療にきわめて有効であり,またうつ状態にもある程度の効果を示すことが認められてきている。この薬物は,従来躁うつ病の治療に用いられてきた向精神薬とはまったく異なった化学的特性を有するので,躁うつ病の病態生理解明に新しい手がかりを与える可能性があり,またその持続的投与によって病相反復の予防がある程度可能であるとの報告が多い(Baastrupら2)1967,Angstら1)1970)ことからも興味ぶかい薬物である。
しかしリチウムはかなり強い毒性を有し(Corcoranら6)1949,Schouら21)1968),その臨床的使用のさいに神経系,循環系,消化系,泌尿系などにわたるかなり多彩な副作用を生ずることが報告されている。なかでも,中枢神経系に対する作用としては,脳波に徐波化,高振幅化,過呼吸にたいする過敏性などの異常を生ずることがあり(Mayfield and Brown14)1966,Platman and Fieve19)1969),まれには全般性けいれん発作の出現も報告されている(Lauter und Middelhoff12)1969)。
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