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文献詳細

雑誌文献

精神医学14巻10号

1972年10月発行

文献概要

研究と報告

分裂病者の的はずれ応答の数量的評価と治療経過—とくに分裂病症状に対する向精神薬と働きかけの単独効果と併用効果について

著者: 八木剛平1

所属機関: 1皆川病院

ページ範囲:P.911 - P.917

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 質問に対してでたらめに応答するひとりの分裂病者が30回往復の廊下掃除を行なうさいに,1往復ごとに往復回数についての「的はずれ応答」を記録しながら,2年間約150回にわたって応答の矯正を続けた。症状の変動は数量的に表現され,向精神薬と働きかけに関するそれぞれの効果の特徴および併用効果について客観的な資料が得られた。
 1)はじめの1年間は2名の看護者が指導を行なった。働きかけの方法は統一せず,向精神薬を投与し,その種類も量も適宜に変更した。的はずれ応答は次第に減少し,第41回で消失した。治療者によって患者のでたらめの程度には有意の差があった。
 2)次の1年間は推定された治療的要因を確認したのち,それらを計画的に組み合わせた。治療者は3名であった。
 a)働きかけを言葉による矯正に統一し,向精神薬を投与しないで働きかけを行なうと,症状は有意の減少を示した。
 b)治療者間の差は働きかけの方法を統一することで緩和されたが,勧誘に対する拒否反応の頻度について差が認められた。
 c)働きかけを行なわないで向精神薬を投与した場合には,症状は有意の減少を示さなかった。
 d)向精神薬を投与しつつ働きかけを行なった場合に,症状は急速かつ大幅に減少した。この減少の速度と幅は向精神薬なしで働きかけた場合にくらべてはるかに顕著であった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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