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文献詳細

雑誌文献

精神医学14巻2号

1972年02月発行

文献概要

特集 作業療法

精神療法的接近について

著者: 武田専1 鈴木寿治1

所属機関: 1武田病院

ページ範囲:P.131 - P.138

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I.はじめに
 われわれは精神分析的精神療法を標榜して病院運営を行なっているが,現在の医療制度のもとではその存続は不可能であるため,一部大部屋を除き室代差額を徴収している。だが,それですら充分なスタッフを揃えることは経営的に不可能である。したがって,すべての患者に精神分析的個人精神療法を行なうことはできず,簡便個人精神療法,集団精神療法とともに,作業・レクなどを集団療法的に組織化し,精神分析的な治療環境を作りあげたいと努力しているのが現状である。
 たしかに,精神分析療法はそのままの形では,一般精神病院では実施は困難であり,精神病院精神医療の問題は,生活療法やリハビリテーションの形で病院精神医学の分野で取り上げられるのみで,精神力動的な立場からの精神療法の試みは,最近まであまりなされていなかったのも当然である。少数の治療者と多数の患者との治療関係に基づき,慢性分裂病者を中心とする集団的な取り扱いの中で,表層的な社会適応の回復に重点を置いてきた精神病院の治療の中に,神経症の通院個人精神療法から発展し,医師・患者の1対1の関係に注目する,精神分析療法を導入することの困難さは明白である。一般精神病院には,精神衛生法および生活保護法による低所得層の患者が多数入院しており,精神医療軽視の現在の医療制度のもとでは,患者個々の精神内界の変化を重視し,きめのこまかいアプローチを要する,精神療法を受け入れる基盤は,経済的条件からみても乏しかったことは自明である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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