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文献詳細

雑誌文献

精神医学14巻2号

1972年02月発行

文献概要

特集 作業療法

院外作業の治療的特徴—社会・経済的な含みについて

著者: 大原重雄12

所属機関: 1茨城キリスト教大学 2大原精神病院

ページ範囲:P.145 - P.151

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I.はじめに
 わが国における院外作業とは,欧米諸国のナイト・ケアとはやや異なった意味を包含した観念であり,多くは,長期間入院している精神病患者が便宜的に病院外の事業所に通勤する,extramuralな就業訓練であり,治療措置でもある。Joshua,Bierer1)が1952年ロンドンにディ・ホスピタルを開設するとともに,一部をナイト・ケアに使い,地域医療的実験を開始したが,その目的は,精神病患者が昼間就業をつづけながら夜間に専門的治療を受けさせ,精神疾患による失職を防止し,逆に生産企業者側がその労働力の損失を減少することにあった。その後米国など自由諸国でも,その実利的な効用をも含めて,早期治療的な観点から普及されてきたものである。またわが国と同型式のナイト・ケアが長期入院患者の復帰治療の最終段階として行なわれるが,院外作業の前後に保護工場やハーフウェイ・ハウスなどの中間的な施設をクッションとしていることが,日本の場合と趣きを異にした点であろう。実際私達が,わが国の社会制度の中で院外作業療法を行なうときには,医療経済的,法制的な制限に阻まれるのであるが,現在全国の精神病院の半数以上が院外作業を実施し,全国入院患者総数の5.4%,13,600人の患者がこの種の社会復帰訓練の恩恵を受けているのである2)。院外作業の手続き,経過その他の問題点については,小林著:病院精神医学研究3)に,豊富な体験にもとづいた綿密な記載がなされているので,著者は側面的な視点から二,三の経験的示唆を補遺するとともに,院外作業の社会経済的含みについて私見を述べることにとどめたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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