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雑誌詳細

文献概要

研究と報告

性周期に一致して周期性経過をとる精神病について

著者: 遠藤雅之1 高橋三郎1 浅野裕1 山下格1

所属機関: 1北海道大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.319 - P.328

I.はじめに
 “性周期に一致して周期性経過をとる精神病”は,日常の臨床において稀ならず経験されるものである。ここでいう“性周期に一致して周期性経過をとる精神病”とは,性周期に一致して著しい精神症状を呈し,少なくとも3回以上の周期を反復し,その中間期は寛解ないし寛解に近い状態になり,一定期間後には人格変化を残さず,まったく健康な状態にかえるものを指している。ところで,これらの疾患群については,非定型精神病に関するいくつかの論文5)6)8)に類似の症例を見出すことができるが,病像や予後などについて十分にまとまった記載はまだみられていない。非定型精神病に関しては,これまでにさまざまの角度から論じられてきたことは周知のごとくであるが,ある見方からすれば,それは本態を異にする種々の精神疾患をやや無原則に包含したものということもできる。諏訪22)は,内因性精神病における定型-非定型の問題が本質的難点を含んでいることを指摘して,非定型精神病が独自の身体的基盤をもつとしたら,それはすでに非定型ではなくなるとも述べている。
 私どもは精神疾患の内分泌学的研究にさいしてとくに性周期に一致して周期性経過をとる症例があることに以前から注目してきた28)29)30)。その後さらに検討をすすめるうちに,この性周期に一致した精神症状の発現が,ある限られた年齢層のみにみられ,経過および予後の面においても際立った特徴を示す一群の患者を見出した。この症例群は,身体的基盤が十分明らかにされたわけではないが,しかし漠然と非定型精神病のなかに含めることなく,臨床的立場から“性周期に一致して周期性経過をとる精神病”として別個に取り上げて検討をすることがふさわしいと思われた。このような類型化を行なうことには十分な慎重さを必要とするが,ひとつの試みとして意義のあるものと考えられる。以下,私どもがこの数年間に経験した症例を中心に若干の検討を加えることにする。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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