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研究と報告
『Willis動脈輪閉塞症』の精神症状について—自験例および本邦379例の検討
著者: 平野正治1 桜井俊介2
所属機関: 1慶応義塾大学医学部精神神経科教室 2小林病院
ページ範囲:P.329 - P.338
文献購入ページに移動A. E. MonizとA. Limaが1927年に発表した頸動脈撮影は,その後手技の改良や造影剤の進歩により広く一般に施行されるようになった。その結果,いくつかの新しい知見が中枢神経系疾患にもたらされた。「頭蓋内に異常血管網を示す疾患」1)として,昭和41年第25回日本脳神経外科学会の特別討議に取り上げられた疾患もそのひとつといえる。昭和31年工藤が"Willis動脈輪閉塞症"として報告2)以来,症例数の増加とともに,その病態・成因などについて,主として日本の脳神経外科医を中心に活発な議論があり,現在すでに400例余りの発見があるとされている。その臨床症状は多種多様であるが,なんらかの神経症状を主徴とするものが大部分である。精神症状を主徴として精神医学的に問題となった症例や精神病院入院の既往のある症例も少数ではあるが報告されている。
著者らは,神経衰弱状態→性格変化→昏迷状態と精神症状を主徴として精神病院に入院し,次第に高度の器質性痴呆状態となった50歳の女性患者で,脳血管写上本疾患群に相当する所見を経験した。
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