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文献詳細

雑誌文献

精神医学14巻5号

1972年05月発行

特集 てんかん分類へのアプローチ

トピックス:抗てんかん薬の血中濃度—その測定方法を中心に

著者: 宮本侃治1

所属機関: 1国立武蔵療養所

ページ範囲:P.427 - P.436

文献概要

I.はじめに
 てんかんの治療薬としてはbromideが1857年Locockにより用いられたのが最初である。その後phenobarbital(PBと略す)が1912年Hauptmannにより,diphenylhydantoin(DPHと略す)が1938年MerritおよびPutnamにより導入された。今日なおPBを含むbarbiturate系薬物と,DPHを含むhydantoin系薬物がてんかん治療の標準的薬物として用いられている。なお図1に示すように,たとえばhydantoinの化学構造上のヘテロ環を変形してethosuximide(Zarontin)やtrimethadione(Minoaleviatin)のような薬物にしたものが小発作に作用し,環を開裂してphenuron,pheneturideのような酸アミド(-CO-NH2)結合をもつ直鎖系薬物にしたものが精神運動発作に作用することがわかった。そのほか化学構造は異なるがスルフォンアミド(-SO2-NH2)結合をもつsulthiame(Ospolot),acetazolalnide(Diamox)や,酸アミド結合をもつcarbamazepine(Tegretol)などが加わって抗てんかん薬として現在用いられているもののほとんどを占めている。このように抗てんかん薬を用いる場合には発作の形に応じて化学構造の系列を考慮した薬物の選択をすることが有効な手段であろう。
 つぎに選択された薬物は体内で有効濃度を保って,長期間連用されることが必要である。しかし多くの抗てんかん薬は血中の治療有効濃度の範囲が狭く,中毒症状を起こす濃度が治療有効濃度の範囲に近接しているため,わずかに投与量を増加することにより種々の神経学的中毒症状をひき起こすことが稀でない。例えば抗てんかん薬として最も広く用いられているDPHでBuchthalら1),Kuttら2)によると血中治療有効濃度は10-20μg/ml(あるいは10-15μg/ml)とされ,10μg/ml以下では発作を抑制することが難しく,この範囲を越すと中毒症状が発現するという。その中毒症状も血中濃度が20μg/mlで眼振,30μg/mlで構音障害,運動失調,40μg/mlで嗜眠,集中力困難などの精神活動低下,60μg/mlで意識混濁,失見当などを起こすと報告されている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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