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特集 てんかん分類へのアプローチ
トピックス:抗てんかん薬の血中濃度—その測定方法を中心に 討論のまとめ
著者: 高橋良1
所属機関: 1長崎大精神神経科
ページ範囲:P.436 - P.437
文献購入ページに移動 鈴木徳治氏(千葉大学薬学部,前東大病院)よりWallaceの紫外部吸収によるDiphenylhydantoin(DPH)測定法の改良法が追加された。すなわち過マンガン酸カリによる酸化が原法では100℃,30分であるのを80℃,5分にすることにより紫外部吸収の妨害の発生を防ぎ,正確な結果を得た上,かつ吸光度の読みの拡大計を用いて,原法(1965年)では10ccの血液を要するのを血漿0.1〜0.4ccで測定可能にした。この改良法により併用薬による妨害もなく,1回の測定に30分を要するだけで能率よく血中DPHを測定でき,既に東大病院精神科の患者の血中DPHの測定はルーチン化されていることが報告された。森昭胤氏(岡山大脳研)は教室の高坂教授が最近デンマークのフィラデルフィアに赴き検討してきたOlesen, O. V. の薄層クロマト法のVedsö変法を紹介し,同法が臨床上実用的なよい方法であることを指摘した。福山幸夫氏(東京女子医大小児科)はSvensmark法の経験を報告し,DPHとphenobarbital(PB)の同時測定を行なったが,1回の測定に約10時間を要し臨床的応用の仕事をするに至らなかった旨をのべた。また髄液の場合はPBはきれいに測定できたが,DPHは成功しなかったという。以上に対し宮本侃治氏はWallaceの鈴木氏変法,OlesenのVedsö変法はともに簡便で臨床的用途に適しているとのべたが,併用抗てんかん薬の多数の同時測定を計画するにはガスクロマト法が適している旨をのべた。小林健一氏(松沢病院)は研究開始当時(1964年)はDill法(比色法)に優るものがなかったことから,これを用いたこと,抗てんかん薬の作用機序という観点から未変化のDPHを測定したが,新しい測定法では併用薬のin vitroの干渉のみでなく,体内の抗てんかん薬の多数の代謝物の干渉が考慮される必要があることを指摘した。宮本氏は代謝物の測定は未だ行なっていないが,Glazkoの一連の研究があること,これは体内代謝状況を知るためと,新しい薬物の発見のため意義が大きいことを指摘した。秋元波留夫氏(国立武蔵療養所)は抗てんかん薬の血中濃度を正確に測定できる段階になり,漸くてんかんの科学的治療に近づきうる希望がもてるようになった今日,この面の研究に集中する研究グループを作ってほしいこと,測定可能の抗てんかん薬から順次,臨床検査の点数化を実現するよう日本精神神経学会が努力されたい旨発言した。
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