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文献詳細

雑誌文献

精神医学14巻6号

1972年06月発行

文献概要

研究と報告

精神科領域におけるオーストラリア抗原の意義と対策について

著者: 前田利男1

所属機関: 1新潟精神病院

ページ範囲:P.521 - P.530

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I.序文
 最近ウイルス性肝炎との関係におけるオーストラリア抗原(以下Au-抗原と略す)の意義が注目されてきている。精神科領域における肝障害の問題は,(1)向精神薬の飛躍的発展に伴う長期療法や大量療法による肝障害,(2)生活様式の向上・変化に伴う酒精中毒,眠剤中毒などによる肝障害,(3)集団生活を原則とする精神病棟内でのウィルス性肝炎の接触・経口感染による集団発生の危険,の3点にしぼることができるようである。
 このような状況において,Au-抗原が臨床的にもひろく利用されるに至り,(1)向精神薬,酒精その他の中毒性肝障害と,ウィルス性肝炎との鑑別がある程度可能となり,その治療も異なってきたこと,(2)精神障害者においては比較的自発的訴えが少ないことが多く,ウィルス性肝炎もその初発症状が嘔気,嘔吐,食欲不振,腹痛,倦怠など心気的訴えと誤られたり,向精神薬によってそれらの症状が隠蔽されやすいこと,(3)ウィルス性肝炎が患者のみならず,看護者,医師,およびその家族に対して感染の危険をもつこと,などの点から,精神科領域においてもAu-抗原の意義は少ないことはない。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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