文献詳細
研究と報告
分裂病患者の社会復帰—病院工場(ベルトコンベアによる組立作業)の経験
著者: 西川喜作1 田村忍2 喜多健2 田代巌2 松田幸子2 大河原正子2
所属機関: 1国立千葉病院精神神経科 2武蔵野病院
ページ範囲:P.539 - P.548
文献概要
1955年以来,精神薬物の進歩によって精神分裂病の治療は病院の内外を問わず,著しい発達をみた。分裂病の寛解はより多く,人格荒廃状態に陥る者もかなり減少したように思われる。しかしわが国においては精神障害者の社会復帰が他の西欧諸国に比してきわめて困難である。すなわち一般社会における精神病に対する偏見,受け入れ家族側での封建的および旧来の風習,人間関係,また受け入れ企業側での不十分な態度,法的制度の問題等々,数え上げると際限がない1)。
精神分裂病のいわゆる欠陥状態といわれるものは人によりこれが施設症候群(institutional syndrome)であるとさえいわれている2)。すなわちこれらの人格荒廃を一見示している患者でもその導き方,ことに生活療法および社会的刺激と興味への参加のさせ方によっては大いに変化させられるのだといわれており,欠陥状態といわれる患者も閉鎖的な,社会と没交渉の暗い病院内にあっては長い期間にかかる状態になることも十分想像できる。
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