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文献詳細

雑誌文献

精神医学14巻7号

1972年07月発行

文献概要

研究と報告

失語症の喚語困難とモーラ数の想起

著者: 杉下守弘1

所属機関: 1東京大学医学部保健学科疫学教室

ページ範囲:P.631 - P.640

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 失語症患者が喚語困難状態にあり,事物の名前を言えもせず,書けもしない場合,その名前のモーラ数なら想起できるかどうかを検討した。対象は20名の失語症患者である。そのうち6名はBroca型失語症,2名はWernicke型失語症,1名は健忘失語症であり,他の11名は分類不能なものであった。
 37枚の線画を患者に示し,その名前を言えず,また書けぬ場合に,そのモーラ数をキー・スイッチを押させて答えさせた。37枚の線画中26枚はモーラ数とsyllable数が一致している語(名称)が描かれており,11枚はモーラ数とsyllable数が一致していない(syllable数がモーラ数より1つ少ない)語が描かれている。
 結果は次のようであった。
 1)5名の患者は喚語困難な語でも,そのモーラ数を正しく想起できた。その5名のうち3名はBroca型失語症,1名が健忘失語症であり,他の1名は分類不能な者であった。これはLichtheim(1885)の結果と一致しない。それに日本語にはかな文字があるためと考えられる。かな文字数とモーラ数は一致しているため,モーラ数の記憶が強められるからであろう。
 2)上記5名において,モーラ数がsyllable数と一致しない語が喚語困難となったときは,一致する語が喚語困難となったときにくらべてモーラ数想起の誤りが多かった。そして,その誤りはモーラ数を1つ少なく答える誤りが多い傾向がわずかに認められた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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