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文献詳細

雑誌文献

精神医学15巻10号

1973年10月発行

文献概要

研究と報告

Lactuloseによる肝脳疾患猪瀬型の治療

著者: 高見沢ミサ1 渡辺明子1 小田桐恵1 融道男1

所属機関: 1東京医科歯科大学神経精神医学教室

ページ範囲:P.1101 - P.1108

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 (1)肝脳疾患猪瀬型2例(28歳女,58歳女)にlactuloseを投与し,諸症状の著しい改善を認めた。本剤の有効量(100〜120ml/日)投与を続けた1年7カ月の間両症例とも悪化しなかった。
 (2)Lactulose投与により動脈血中ammonia値は有意に減少し,脳波および意識障害も有意に改善し,1例では手指振戦も軽減した。
 (3)腸内細菌叢に対する作用をlactulose非服用時と比較すると,Lactobacilliを有意に増加させ,大腸菌とBacteroidesの有意の減少をもたらしたが,総菌数およびBifidusに対しては影響はなかった。しかし,Bifidusと総菌数,あるいはBacteroidesあるいは大腸菌との比をとって調べると有意な増加が認められた。
 (4)腸管内pHはlactulose服用時に著明に酸性化することが確かめられた。これはBifidusなどがlactuloseを分解して酢酸,乳酸を生成するためであると考えられ,この腸管内pHの低下が,腸管内のammoniaの発生と吸収を阻害する重要な因子であると思われた。
 (5)至適用量は100〜120ml/日であり,Biosminの併用が効果を高めるように思われた。
 (6)副作用としては投与初期に腹部膨満感と腸管内ガス発生が一時的に認められた。血清生化学的所見,血球数などには異常は生じなかった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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