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研究と報告
Capgras症候群の1例
著者: 原俊夫1 佐藤喜一郎1 松見達俊2
所属機関: 1北里大学医学部精神神経科教室 2常盤病院
ページ範囲:P.1193 - P.1201
文献購入ページに移動1923年にフランスの精神医学者Capgras and Reboul-Lachaux2)がl'illusion des sosies(替玉妄想)として,患者の身近にいる人物,多くの場合患者の夫が,いつの間にか瓜ふたつの替玉に取りかえられているという症状を報告した。Capgrasand Carrette3)は1924年にも第2例を報告し,これをFreudのエディプス・コンプレックスの機制で説明しようとした。これが一つの契機となり,Courbon and Fail8)によりl'illusion de Fregoli(変装妄想)なる症状も報告され,いわゆる“替玉”であると妄想的に解釈する症状についての議論がヨーロッパにおいてさかんになり,Vie(1930)21)やEnoch(1963)10)のまとめもあり,最近でも外国では1例報告などが行なわれている。
本邦においては木村ら14)が「家族否認症候群について」という論文の中で論じている症例は,夫否認という症状はあっても瓜二つの替玉であるとはいっていないし,また高柳18)の論文の副題にCapgras症候群という名称は入っているものの,それに相当する症例はあげていない。
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