文献詳細
研究と報告
心因を契機として幻覚妄想状態と発作性脳波異常を呈した2症例について
著者: 斎藤嘉郎1 高橋三郎1 山崎晃資1 山下格1 里見龍太1 伊藤哲寛2
所属機関: 1北海道大学医学部精神科神経科教室 2帯広緑ケ丘病院
ページ範囲:P.173 - P.181
文献概要
妄想・幻覚などの精神分裂病様症状を呈しながら,定型的な精神分裂病とは断定できにくい症例が少なからずある。諏訪1)が指摘しているように,内因性精神病と称されるものの中には,「躁うつ病的色彩をもつ分裂病様状態(またはその逆),周期的にあらわれる分裂病様状態,躁うつ病から分裂病への移行型(またはその逆)」などの非定型群が含まれており,このことが,内因性精神病の本態を問題にする場合,精神病理学的な議論をいっそう複雑にする要因となっている。しかし,非定型群のみならず,定型的内因性精神病の本質を解明するためにはPauleikhoff, B. 2)の主張するように「同一の症状のみを十分条件とせずに,それを露呈するに至った状況依存的な患者の心理状態,疾患の経過などを十分吟味した上で,精神病理学的疾患単位を定める」入念な努力を欠いてはならない。
著者らがここでとりあげた症例も,いわゆる非定型群に属すると思われるケースであるが,発病に至るまでの特異な心理的経過,および精神症状の消長に一致した発作性脳波異常など,興味ある問題を含んでいる。本論文においてはとくに,これらの要因のもつ病因的な意義について考察を加えたい。
掲載誌情報