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研究と報告
分裂病様症状を呈したWerner症状群の1例
著者: 大沢郁子1 大内田昭二1
所属機関: 1日本赤十字社医療センター神経精神科
ページ範囲:P.257 - P.266
文献購入ページに移動 われわれは分裂病様精神症状とWerner症状群の多彩な身体症状が並行して増悪改善を示す1症例を数年余にわたって診る機会を得た。本例は14歳時分裂病と診断され治療を受けた後,23歳より若年性白内障,糖尿を指摘され,24〜25歳夏の2回にわたり幻覚妄想状態,自我障害,緊張症状群などの分裂病様精神症状を呈した。しかし①不機嫌,易怒,執拗の特徴を有し,②精神症状寛解時の人格像は情意減弱,自閉などの特有の分裂病欠陥状態はみられず,③精神症状増悪時は脱毛,皮膚の角化萎縮変化,無月経,糖尿,血中Ca値低下などの身体症状が並行して消長を示した。また本例は別に痙攣発作,不随意運動発作,偽死反射様無動状態の発作などの症状も示したが,これらは血中Ca値低下と並行して慢性副甲状腺機能低下にもとづく可能性も考えられた。また上記3項から本例の分裂病様症状は分裂病過程にもとづくものではなく症状性のものであると解した。また身体症状の一部が軽快再燃の経過をとることから,Werner症状群の障害を早期老化なる退行機制で説明することは困難であろうと批判を行ない,症状精神病に関する一寄与となることを願ってここに詳細な報告を試みた。
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