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特集 痴呆の臨床と鑑別
痴呆とその時間構造の障害
著者: 越賀一雄1
所属機関: 1大阪医科大学神経精神医学教室
ページ範囲:P.351 - P.355
文献購入ページに移動 本論文においてはすでに発表した語義失語患者の1例について報告し,とくにその対話形式の特有な症状を述べ,その所見から筆者は真の現在,W. Sternのいうerlebte Gegenwart,AhrensのPräsenszeitには過去から未来への絶えざる進行の面と,過去を保存し,止まって未来を待機する停止の面があり,そこに現在のもつ矛盾的(paradoxical)な性格,いわばZeitparadoxがあることを指摘し,時が直線的であるとともに,ある空間的な拡がりをもっていることを論じ,かかる矛盾した構造をもつ現在が,その拡がり,延長という場所的性格を失い,passivem,receptiveな面を失い,単にaktive,expressiveな面のみとなり,単なる一点の絶えざる進行にすぎなくなるとき,先に述べたStörringのいう一軌道性(Eingleisigkeit)を呈し,その談話はまったく一方的な止まることなきRededrangの様相をおび,その対話の形式が失われ,あたかもMonologにも似た形式とならざるをえないのである。
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