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東京女子医大神経精神科における患者の推移統計(昭和25〜45,1950〜1970)—第3部 内因性精神疾患入院患者について
著者: 末田田鶴子1 田村敦子1 稲川鶴子1 浅野欣也1 寺坂小夜子1 田中朱美1 伊藤みさ1 大木卓朗1 下浜紀子1 中村泰子1 石川陽子1
所属機関: 1東京女子医科大学神経精神科
ページ範囲:P.547 - P.564
文献購入ページに移動私どもはこれまで第1部に外来初診患者の推移統計を1),第2部に入院患者全体についての21年間の統計の概観を発表した2)。今回は入院患者の大多数を占める内因性精神疾患患者についてやや詳細な調査報告,考察を行なう。内因性精神疾患とはいうまでなく現在まで身体的原因の確認されていない,かつ異常体験反応と認められない疾病性格をもつ精神疾患の総称で,内因性うつ病・躁病,精神分裂病(以後分裂病と略す)と診断されているものがこれに含まれている。すなわち一方で身体的基礎をもつ精神疾患(器質的あるいは外因性精神疾患)と,他方異常体験反応あるいは異常人格と対比される概念である。この疾患群を躁うつ病圏と,早発性痴呆あるいは精神分裂病圏とに大きく分けることは,Kraepelin(1899 Aufl. “Psychiatrie”)以来の伝統であるが,この2つが明確な意味での疾患単位であるかどうかは今日なお議論のあるところで,2つの類型にすぎないとするものもある。またこの2つの鑑別は,病像,経過型,予後などからなされているものの,学者によりかなり相違している。さらにこの両者の混合とみる混合精神病,および変質性精神病,あるいは非定型精神病等々いまだ核心がはっきりしていないものの周辺に曖昧なものがつけ加わり,事情はますます混乱している現状である。しかし神経精神科の実際の臨床においては第2部に述べたごとく,大部分の統計でこの内因性精神疾患が新入院患者の50%以上を占めていることだけを取り上げても,精神医学にとって緊急な課題といえる。
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