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攻撃性の精神力学
著者: 福島章1
所属機関: 1東京医科歯科大学犯罪心理学研究室
ページ範囲:P.580 - P.606
文献購入ページに移動I.はじめに
Hommone hommini lupus?
19世紀の末,西欧社会における2つのタブーともいうべき性と攻撃の問題に,S. Freudは正面から取り組んだ。この2つの主題のうち,性にかんしては——genitalなものとしてであれ,sexualなものとしてであれ,あるいはErosとしてであれ——ひろく,深く論じられた。それは精神医学,心理学の領域だけでなく,思想,社会,教育,人類学,宗教,文学など広い領域に大きなインパクトを与えてきた。ところが,一方の攻撃性の主題にかんしては,今日まで十分な検討や理論的集成が行なわれてきたとはいえない。じっさい,Freudにおいてさえ,こどもの恐怖症の分析やエディプス・コンプレックス論の中に垣間見られた攻撃性の主題が,彼自身の理論体系の主柱の一つになるのは晩年になってからである。Freudより早く,攻撃性を人間の基本的動因として考えたのは,じつはA. Adler(1908)である。しかし,Adlerの関心は周知のとおり攻撃性から劣等コンプレックスに移っていった。後の研究者たちに決定的に大きな影響を与えたのは——彼の理論に同意するにせよ批判するにせよ——Freudであった。
Freudの提起した攻撃本能や死の本能の主題は,その後児童精神分析学者の間で発展していった。この問題にはたしたPsychoanalytic Study ofthe Child誌の貢献は非常に大きい。
Hommone hommini lupus?
19世紀の末,西欧社会における2つのタブーともいうべき性と攻撃の問題に,S. Freudは正面から取り組んだ。この2つの主題のうち,性にかんしては——genitalなものとしてであれ,sexualなものとしてであれ,あるいはErosとしてであれ——ひろく,深く論じられた。それは精神医学,心理学の領域だけでなく,思想,社会,教育,人類学,宗教,文学など広い領域に大きなインパクトを与えてきた。ところが,一方の攻撃性の主題にかんしては,今日まで十分な検討や理論的集成が行なわれてきたとはいえない。じっさい,Freudにおいてさえ,こどもの恐怖症の分析やエディプス・コンプレックス論の中に垣間見られた攻撃性の主題が,彼自身の理論体系の主柱の一つになるのは晩年になってからである。Freudより早く,攻撃性を人間の基本的動因として考えたのは,じつはA. Adler(1908)である。しかし,Adlerの関心は周知のとおり攻撃性から劣等コンプレックスに移っていった。後の研究者たちに決定的に大きな影響を与えたのは——彼の理論に同意するにせよ批判するにせよ——Freudであった。
Freudの提起した攻撃本能や死の本能の主題は,その後児童精神分析学者の間で発展していった。この問題にはたしたPsychoanalytic Study ofthe Child誌の貢献は非常に大きい。
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