文献詳細
追悼
文献概要
私の最も尊敬する先輩の1人である林道倫先生が長逝された。米寿を祝う高齢であったとはいえ,まことに哀悼に堪えない。日本の精神医学界はここに世界に誇る学究を失ったのである。
先生と私との間にはそれほど親しい直接の関係はなかったが,私が1923年(大正12年)に大学を出て,東大の精神科教室に入局したとき,すでに道倫(どうりん)さん(われわれの間での愛称)の雷名は高かった。大変な勉強家で,しかも生来見識の高い人だというので,後輩たちは畏怖の感をすら抱いていたようだ。当時,図書室の目ぼしい論文の巻末には,「林某日読了」とか,「何月何日下田」とかいう署名がよく目に付いたものである。それは同期の下田光造先生と林先生とのライバル意識の表現のようにも,われわれには受けとられた。若い先輩のなかには,道倫さんに読書の相談をして,「あの本は君にはわからんですよ」と一喝され,閉口したものだと話してくれた人もある。
先生と私との間にはそれほど親しい直接の関係はなかったが,私が1923年(大正12年)に大学を出て,東大の精神科教室に入局したとき,すでに道倫(どうりん)さん(われわれの間での愛称)の雷名は高かった。大変な勉強家で,しかも生来見識の高い人だというので,後輩たちは畏怖の感をすら抱いていたようだ。当時,図書室の目ぼしい論文の巻末には,「林某日読了」とか,「何月何日下田」とかいう署名がよく目に付いたものである。それは同期の下田光造先生と林先生とのライバル意識の表現のようにも,われわれには受けとられた。若い先輩のなかには,道倫さんに読書の相談をして,「あの本は君にはわからんですよ」と一喝され,閉口したものだと話してくれた人もある。
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