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追悼
林道倫さんの思い出
著者: 内村祐之12
所属機関: 1東京大学 2財団法人神経研究所
ページ範囲:P.799 - P.800
文献購入ページに移動先生と私との間にはそれほど親しい直接の関係はなかったが,私が1923年(大正12年)に大学を出て,東大の精神科教室に入局したとき,すでに道倫(どうりん)さん(われわれの間での愛称)の雷名は高かった。大変な勉強家で,しかも生来見識の高い人だというので,後輩たちは畏怖の感をすら抱いていたようだ。当時,図書室の目ぼしい論文の巻末には,「林某日読了」とか,「何月何日下田」とかいう署名がよく目に付いたものである。それは同期の下田光造先生と林先生とのライバル意識の表現のようにも,われわれには受けとられた。若い先輩のなかには,道倫さんに読書の相談をして,「あの本は君にはわからんですよ」と一喝され,閉口したものだと話してくれた人もある。
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