文献詳細
研究と報告
文献概要
I.はじめに
近年,精神分裂病の家族研究はきわめて盛んに行なわれているが,躁うつ病圏の精神病については,研究の試み,そのものが少ないように思われる。その理由については種々考えられるが,最大の理由は躁うつ病の病因論が分裂病に比較して身体因性(生化学的)の可能性を強く示唆することによるのではないかと思われる。もちろん,精神分析の分野では躁うつ病に対する治療的接近を試みる道程に当然,家族的問題を含んできている。しかし,それとても,Freud4),Abraham1)らのごとく体質や,心理学的な跡づけの困難な循環性あるいは日内変動性を容認したうえで,心理構造やpersonalityの分析を行なっているのであり,精神分析的治療自体としても躁うつ病に対しては現在までのところあまり積極的であったとはいえないようである。
ところで,最近の躁うつ病に対する精神病理学的研究の焦点は,主として躁うつ病者の性格学と発病状況論にあると思われるが,性格形成の基盤となる生育史的研究,なかんずく家族研究はきわめて乏しいように思われる。われわれは,初め,躁うつ病者に対する最近の発病状況論を踏まえたうえで,治療的接近を試みているうちに,患者をめぐる現在の家庭状況の特徴に注目するようになった。さらに次第に,現在の家庭状況と生育史的家庭状況との連続性に視点を移してゆく必要性も感じ,両者を併せて1971年の第26回東北精神神経学会総会においてその研究成果の一部を発表した。
近年,精神分裂病の家族研究はきわめて盛んに行なわれているが,躁うつ病圏の精神病については,研究の試み,そのものが少ないように思われる。その理由については種々考えられるが,最大の理由は躁うつ病の病因論が分裂病に比較して身体因性(生化学的)の可能性を強く示唆することによるのではないかと思われる。もちろん,精神分析の分野では躁うつ病に対する治療的接近を試みる道程に当然,家族的問題を含んできている。しかし,それとても,Freud4),Abraham1)らのごとく体質や,心理学的な跡づけの困難な循環性あるいは日内変動性を容認したうえで,心理構造やpersonalityの分析を行なっているのであり,精神分析的治療自体としても躁うつ病に対しては現在までのところあまり積極的であったとはいえないようである。
ところで,最近の躁うつ病に対する精神病理学的研究の焦点は,主として躁うつ病者の性格学と発病状況論にあると思われるが,性格形成の基盤となる生育史的研究,なかんずく家族研究はきわめて乏しいように思われる。われわれは,初め,躁うつ病者に対する最近の発病状況論を踏まえたうえで,治療的接近を試みているうちに,患者をめぐる現在の家庭状況の特徴に注目するようになった。さらに次第に,現在の家庭状況と生育史的家庭状況との連続性に視点を移してゆく必要性も感じ,両者を併せて1971年の第26回東北精神神経学会総会においてその研究成果の一部を発表した。
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