文献詳細
研究と報告
Cyanamide Double Medicationにおける飲酒嗜癖者の抗酒反応に対する態度について
著者: 有川勝嘉1 長沼六一1 小鳥居衷1
所属機関: 1久留米大学医学部精神神経医学教室
ページ範囲:P.853 - P.860
文献概要
いわゆる慢性アルコール中毒ないしはその基盤をなす飲酒嗜癖の治療としてのcyanamide double medication8〜10)やspecial therapy8)においては,治療過程の全部またはそのほとんどの部分で患者は抗酒剤Cyanamide(以下Cyと略す)の服用を自覚していないので,患者がCyを投与されていることを知らずに飲酒することに種々の観点から危惧の念を抱かれているようである。その一つはCyの服用を知らない患者が大量飲酒によって過大な抗酒反応をひき起こすのではないかという点と,もう一つは患者が体験する抗酒反応に疑問を感じ家族(主として妻)からの抗酒剤の投与が露呈して家庭内の人間関係をそこなうのではないかという懸念である。われわれはこれまでこれらの外来治療を多数例にわたって行ない,すぐれた治療効果3)やその背景には患者をとりまく人間関係の改善がみられる4)こと,あるいはCy投与にさいしての具体的な注意点5,9)などを報告し,以上の疑問点の一部にはすでに答えている。今回さらにこれらを具体化するために,家族を通して患者が家族からのCyの投与を知ったり疑ったりしているかどうか,もし疑っている場合患者はどんな反応を示しているか,また疑っていない場合患者は自己の体験する抗酒反応や耐酒量低下をどのように受けとっているかについて調査した。ここに結果を報告し,そこに見られた患者の人間的特徴の一側面について考察する。
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